100年前にタイムスリップ!「パテ・ベビー」渡来100年記念 貴重な映像を生演奏と解説付きで上映
2023年10月15日(日)
レポート
14日(土)、今年のサイレント・クラシック映画部門は「パテ・ベビーの渡来100年」を記念し、貴重なフィルムをデジタル化した作品をおもちゃ映画ミュージアムにて上映しました。
パテ・ベビーとは、1922年にフランスのパテ社で誕生したフィルム幅9.5㎜の家庭用撮影&映写機。日本には誕生翌年の1923年に早くも輸入され、「9ミリ半」という愛称で親しまれました。
カメラも映写機も小さいパテ・ベビーが誕生して以来、富裕層を中心に小型映画を作ったり、ホームムービーを楽しんだりできるようになりました。それまで映画館で上映後に家庭向けに切り売りされた映画断片(おもちゃ映画、35mm)でしか楽しめなかったのが、小型映画も家庭で観られるようになったのです。パテ・ベビーは、当時一般家庭では買えない高級品だったといいます。おもちゃ映画ミュージアム館長の太田米男さんによると、会社の社長さんやお医者さんなどのお金持ちが持っていたそう。
一方、会場のおもちゃ映画ミュージアムは、築100年の京町家を改装したレトロな建物で、映画の誕生にまつわる光学玩具、写真、幻灯機など映画ファンならたまらない貴重品の数々が展示されています。映画関連機材や日本の無声映画を次世代に残す活動をしており、収集した映像を一目見ようとたくさんのお客さんが集まりました。
時代を記録したホームムービー
100年前に日本にやってきたパテ・ベビー。太田さんがまず、「家庭で撮られたホームムービーには、大正末から昭和初頭の文化や生活がたくさん残されています。当館では、寄贈されたフィルムを専用のスキャナーでデジタル化して資料として残し、見ていただいています」と説明してくれました。
最初に上映するのは、『9 1/2㎜』という作品です。これは、2022年にパテ・ベビーが誕生して100年を迎えたのを記念して、アマチュア映像の保存や研究に取り組む欧州の非営利機関「INEDITS」が世界14か国から集まった映像をもとに作ったモンタージュ映画。世界各国から集まった全40本の映像の中には、気球が飛ぶ様子や赤ちゃんが生まれた家庭のワンシーンなど絵葉書のようなカットがたくさん。高級車が走る映像など当時のお金持ちの暮らしぶりも伝わります。中には戦前日本の子どもたちの映像も含まれていました。監督のひとり、アンナ・ブリックスさんの声掛けで、日本からは神戸映画資料館、福岡市総合図書館、おもちゃ映画ミュージアムから提供した映像が使われています。
映像を見ていると知らない人の記憶の中に迷い込んだような不思議な感覚に。次は、天宮遥さんのピアノ生演奏とともに、旧満州の富裕層の生活が垣間見える戦前の映像を紹介。人々のクラシカルな生活や当時の祭りの様子に天宮さんが軽快な音楽をつけることで、映像に命が吹き込まれました。
さらにパテ社が販売したバレエのも模範演技やF1レースなどの記録映像作品、朝日新聞社の飛行機”神風号”のパリ・ロンドンのニュース映像などプロが撮ったものも紹介。上映後は、太田さんからパテ・ベビーのマニアックな仕掛けや編集の裏話も飛び出しました。
「過去の映像には戦争の暗いイメージがつきものですが、今日は人々の幸せな表情がたくさん見ることができて感動しました。100年後の人たちが今の私たちが残した映像を見るとどんなことを思うのでしょう…」と思いを馳せる天宮さん。
太田さんは「京都ではたくさんの映画がつくられてきましたが、原版がほとんど残っていません」と博物館やアーカイブの重要さを強調し、「国立の映画アーカイブの分館を京都につくってほしいですね」と熱望。パテ・ベビーのような貴重な映像の数々を次世代へ継承することの大切さをアピールしました。
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