『京都国際映画祭2023』閉幕 クロージングは中島貞夫監督を偲ぶスペシャル鼎談!
2023年10月15日(日)
レポート
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10月13日(金)~10月15日(日)の3日間、よしもと祇園花月をはじめとした京都市内の各会場にて開催された「京都国際映画祭2023」もいよいよフィナーレ。よしもと祇園花月では授賞式とクロージングが行われました。
今年の京都国際映画祭では、当映画祭の名誉実行委員長を長年務められた中島貞夫監督の追悼上映をはじめ、映画上映や舞台挨拶、アート作品の展示やオンライン企画なども同時に展開し、映画もアートもその他も全部お楽しみいただける内容となっていました。
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最終日15日(日)、授賞式とクロージングのステージにはMCの木村祐一と佐々木ひろみが登場。木村は10年目を迎えた映画祭について、京都は映画とは切っても切れない根付いたものがある、京都の方が肌で感じられる映画祭になっていると感じていると話すと、「中島監督は昨日から前乗りで来られていると思います」と話しました。
牧野省三賞を受賞したのは阪本順治監督
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ここから授賞式がスタート。まず門川大作京都市長の挨拶です。門川市長は映画祭が10年目を迎えたことについて、うれしく心強い限りと話すと、SDGsや京都の文化との連携などに取り組んでいる映画祭が、さらに発展することを祈念していると挨拶しました。
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続いて古川博規京都府副知事が登壇し、西脇隆俊知事からのメッセージを代読。中島貞夫監督へのお悔やみを伝えると、これまでの功績に敬意を評しました。映画祭については、多彩なコンテンツを世界に発信するイベントで、今後ますます発展することを確信しているとメッセージを寄せました。
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今年3月、京都に移転した文化庁から文部科学省大臣官房審議官 文化庁京都担当の日向信和氏が文化庁長官の都倉俊一氏のメッセージを代読しました。都倉氏は、映画祭の歴史に触れると、3月に移転した文化庁が今後も京都、関西の魅力ある文化の発信に取り組んでいくことを伝えました。
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続いて『牧野省三賞』の発表です。過去のVTRが流されたあと、選考委員を紹介。ステージには大阪大学名誉教授 上倉庸敬氏、総合プロデューサーの奥山和由氏が上がりました。本年度、『牧野省三賞』を受賞したのは、阪本順治監督です。阪本監督は、拍手に迎えられてステージへ。
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そしてプレゼンターである俳優の名取裕子氏から阪本氏へトロフィーが授与されました。選考理由について奥山氏は、「(阪本監督は)エンタテインメントでありながら作家性が強く、無骨な笑いがうまい人、尊敬している分怖かった」と笑わせると、「中島監督が阪本監督に受け取ってもらいたいという思いが強かった、心からおめでとうございます」と伝えました。プレゼンターを務めた名取氏は「これからの日本映画界を引っ張っていってもらいたいという中島監督の気持ちがトロフィーにこもっていると思います」と祝辞を伝えました。
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阪本監督は、あらためて感謝を伝えたあと、中島監督にお会いできなかったことだけが残念と話し、「この賞は日本映画界の発展に寄与した方に贈られるということですが、自分はまだ寄与していない、これから寄与します」と笑わせました。
あの人気俳優が三船賞に恐縮
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いて『三船敏郎賞』です。選考委員が紹介されたあと、三船プロダクション 代表取締役 三船史郎氏、奥山氏がステージへ。本年度の受賞者が竹中直人氏であることが発表されました。竹中氏は公演中で残念ながら欠席でしたが、奥山氏は受賞理由を「三船賞の主旨から言って竹中さんだろう、となった」と話すと、ザ・日本人という感じで海外に出ていただきたいと期待を込めました。
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竹中氏は受賞コメントVTRで、まず阪本監督にお祝いを伝えると、「とんでもない賞をいただいたみたい、恐れ多すぎて何度も辞退をお願いしたもののどうしてもということで受け取らせていただきます」と恐縮。そして、阪本監督は自分の受賞に納得していないのでは、さらに作品になぜ自分を呼ばないのか議論したいと呼びかけ。最後に「本当に現場に行きたかったです、とてつもなく光栄な賞をありがとうございました、この賞をいただいたことを勇気に、映画の世界にしがみついていきたいと思います」と改めて感謝を伝えました。
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メッセージ聞いた阪本監督は竹中氏について「もう監督という感じで出演してもらう発想がなかった」と話すと「お顔が饒舌なので無声映画とか」とアイデアを披露。トークの間には木村が阪本監督にオファーするシーンも見られました。続いて、これからの三船賞について三船氏がコメント。「日本には素晴らしい俳優さんがたくさんおられます、これからも賞にふさわしい俳優さんが受賞してくれれば父も喜んでくれると思います」と期待を込めました。
来年は新しい未来を築くようなイベントに!
続いて、京都国際映画祭アート部門の総括としておかけんたが登壇。けんたは「エエ声〜!」を披露したあと、アートは気軽に見てもらうのが一番とアピール。自身がスマホで撮影したという今回の映画祭で出展されていた作品をスクリーンに映し出して解説したあとは、木村との息の合ったかけあいも。最後に「引き続き11年目もがんばらせていただきたい」とアピールしました。
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最後に京都国際映画祭実行委員会 中村伊知哉実行委員長からの総括です。中村氏は今年の映画祭は中島監督にありがとうを伝えるとともに新しい文化を伝えていく節目にしないといけないという気持ちで開催したと明かし、来年からは新しい未来を築くようなイベントにしていきたいと語りました。
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中島監督を偲んで豪華鼎談が実現
引き続き『京都国際映画祭2023』クロージングへ。今回は京都国際映画祭実行委員会 名誉実行委員長として永らく尽力した中島貞夫監督を偲び、奥山氏、名取氏、阪本監督が鼎談を行いました。
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まず中島監督と京都国際映画祭の足跡をたどるVTRが流れると、奥山氏は「胸が熱くなりますね」とぽつり。そこから京都国際映画祭が始まるきっかけとなった中島監督との会話を明かすと、その人となりが伝わるエピソードが続々と飛び出します。阪本監督は「二度ほどしかお会いしたことがない」と断りつつ、好きな中島監督作品を挙げ、「京都の職人の極みたいなことを感じる」と話しました。
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この日、会場で上映された『序の舞』で初主演を務めた名取氏は、1984年に中島監督とともに旧ソビエト連邦の『タシケント映画祭』に招待された際の貴重な写真を見ながら、当時の思い出を語ってくれました。写真の中島監督を見て「40年前と変わらない」と笑顔。そして、「いつも火の玉を抱えているように撮りたいっていう人、エネルギーが減らない、太陽のようにいつも明るい、引っ張っていく力、空気がある方だった」と振り返り、「監督に出会えたことで映画に携わることができた、映画への情熱というものが消えずに燃え続けている方がいる、前を向いて進んでいる方がいるということが支えになりました」と話すと、阪本監督にトロフィーを渡すことができたのは、中島監督の長年の思いをお手伝いできたと思う、と語りました。
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阪本監督は「中島監督が自分の名前を挙げてくれたことがあると今日聞いて、仕事の仕方も含めて、立ち戻らなければいけないものがたくさんあるなと思った」とコメント。そして、今日中島監督の功績を確認して、改めて考えてみたいと思いますと話しました。奥山氏は亡くなる少し前の中島監督とのやりとりを明かし「おこがましいですが、元気であちらの世界で映画撮ってくださいっていうありきたりなことしかいえないですね」と締めくくりました。
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